実施中

担当者紹介

富士工業技術支援センター CNF科 主任研究員 中島大介
岐阜県羽島市出身の37歳。静岡大学入学を機に静岡に住み始めて18年がたちました。あのころ大はしゃぎで写メを撮っていた富士山も、いつの間にかそこにあって当たり前のものになりました。
大学卒業後は浜松市の某断熱工事企業に就職し、その後転職して平成24年に静岡県庁に入庁。最初の7年を静岡県工業技術研究所の環境エネルギー科で過ごした後、県庁で2年勤務し、令和3年度から富士工業技術支援センターのCNF科にて勤務しています。
当センターに来てくださる皆様の話を聞き「まじめに、だけど楽しく」をモットーに、企業の課題解決に向けたお手伝いをしています。

担当者写真

研究内容

CNFとは、植物の体を構成しているセルロース繊維を取り出し、ナノメートル単位まで細かく解きほぐした微細繊維材料です。軽量かつ高強度な材料であり、プラスチック等の素材に混ぜることで、その素材の強度を高める効果を持っています。少量混ぜるだけでもプラスチックの強度を補うことができるため、プラスチック使用量の削減につながります。

またCNFは高粘度、保湿・保水性、形状安定性などさまざまな特性を持つことが知られており、ボールペンのインクやお菓子、電池材料、コンクリートの先行剤にいたるまで、実に幅広い用途での応用が期待されています。

CNFは植物を原料にしていることから生分解性があり、環境にやさしいカーボンニュートラルな材料でもあります。今後CNFの応用範囲を広げ、関連製品の開発を進めることで、SDGsで掲げられている持続可能な循環型社会を、植物由来材料であるCNFを使って実現することを目指します。

 

環境対応材料として注目されているCNFですが、未だ一般に販売されているCNF関連製品は多くありません。加えて、CNFを製造するためには大型の機械による長時間の処理が必要となるため、膨大なエネルギーが必要となり、製造時の環境負荷が非常に大きいことが問題となっています。

こうした状況に対応するため、これまでTEMPO酸化法による省エネルギーなCNF製造方法の普及に努めてきました。

TEMPO酸化法とは、東京大学の磯貝明氏が確立した触媒を用いたCNF製造手法です。触媒を用いて原料のセルロース繊維を改質することで、通常は数時間かかるCNF製造プロセスが、20分程度まで短縮できるようになります。さらに、プロセス全体を通して熱や圧力の制御が不要であるため、より環境負荷の少ないCNFを得ることができます。

しかし、CNFは解繊方法(繊維を解きほぐす方法)によってその性状や消費エネルギーが変化することが知られています。TEMPO酸化法について、解繊方法ごとにこれらの性状をまとめたデータは未だ少なく、企業による研究開発の妨げとなっています。

そこで、今回の研究では、TEMPO酸化処理を施したセルロース原料を、一般的に入手しやすいさまざまな解繊装置を使ってCNF化し、その際の処理条件や消費エネルギー、得られたTEMPO酸化CNFの粘度、形状等の基礎情報を収集します。

得られた情報を一般に公開することで、各企業で保有している解繊装置からどのような条件で、どのようなTEMPO酸化CNFが得られるのかがあらかじめ把握できるようになります。この情報を元に各企業が自社のラボでCNFを自作することができれば、関連製品開発のハードルが大きく下がり、CNFの利活用を強力に促すことができます。さらに、より省エネルギーで環境負荷の低いTEMPO酸化CNFの利用を促すことで、CNF関連製品の環境適合性をさらに向上させることができます。

これに加えて、TEMPO酸化CNF特有の性質でもある金属イオン交換について簡便なマニュアルを作成します。解繊方法に加えて、通常のCNFにはない応用的な活用方法についても情報を発信することで、より広い分野でTEMPO酸化CNFの活用が進むことが期待されます。

謝辞

この研究は皆様からの暖かいご支援により成り立っています。心より感謝申し上げます。

ご支援いただいた皆様(50音順)

  • 相川鉄工株式会社様
  • 有限会社京和工業 取締役 安部 一祐様
  • 株式会社静岡プラント様
  • 株式会社ブッス・ジャパン様

その他、55の企業・個人の皆様