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はじめに

輸送機器産業が抱える、開発期間短縮や軽量化などの技術的課題解決のため製造現場のデジタル化が求められており、その解決手段として金属3Dプリンタが注目されています。

浜松工業技術支援センターは、令和4年度、金属3Dプリンタ及び関連装置を導入しました。データ作成、造形、後加工など一連の作業が可能となり、様々な部品を金属3Dプリンタで試作できます。

当所に導入した金属3Dプリンタは、SLMソリューションズ社製のSLM280です。造形条件や材料選択の自由度が高く、特に輸送機器業界で活用されている装置です。

ぜひ気軽に金属3Dプリンタを体験していただき、県内企業の皆様の事業にお役立てください。

金属3Dプリンタとは

金属3Dプリンタとは、金属粉末をレーザビーム、電子ビーム、溶融押出し、インクジェット等を用い、3次元データ(3D CADデータ)をもとに一層ずつ積み重ねることにより、三次元立体形状を積層造形して目的形状を作製する装置です1)

三次元積層造形と切削を組み合わせたハイブリッドタイプの金属3Dプリンタも販売されており、主に金型用途で活用されています。

なお、三次元積層造形技術は、これまでRP(Rapid Prototyping)、RM(Rapid Manufacturing)などの名称で呼ばれてきましたが、2009年のASTM(American Society for Testing and Materials)F42 委員会において、これらの技術を総称して AM(Additive Manufacturing)と呼ぶことが決定されました。本技術は、切削加工、鋳造などに次ぐ革新的な加工法として認識されています2)

1) 萩原恒夫「 3Dプリンタ材料の最新動向と今後の展望 」:日本画像学会誌、第54巻、第4号、293-300(2015)
2) 京極秀樹「三次元造形技術を核としたものづくり革命プログラムの目指すもの」:計測と制御、54巻、6号、386-391 (2015)

金属3Dプリンタの分類

一般的に、金属3Dプリンタは、付加製造プロセス(造形方法)の違いにより分類されます。AMに関する国際規格:ISO/ASTM FDIS 52900に対応する国内規格:JIS B 9441(2020)で分類される造形方法とその定義は次の通りです。

付加製造プロセスカテゴリ カテゴリ説明
結合剤噴射法、バインダジェット、Binder Jetting(BJT) 液状の結合剤を選択的に供給して、粉末材料を結合する付加製造プロセス。
指向性エネルギー堆積法、Direct Energy Depositon(DED) 集束させた熱エネルギーを利用して材料を溶融し、結合、堆積させる付加製造プロセス。
材料押出法、Material Extrusion(MEX) ノズルまたはオリフィスから材料を押し出し、選択的に供給する付加製造プロセス。
材料噴射法、マテリアルジェット、Material Jetting(MJT) 造形材料の液滴を選択的に堆積する付加製造プロセス。
粉末床溶融結合法、パウダーベッドフュージョン、Powder bed fusion(PBF) 熱エネルギーを使用して粉末床を選択的に溶融凝固する付加製造プロセス。

金属3Dプリンタの工程

当所の金属3Dプリンタはパウダーベッド方式(Powder bed Fusion:PBF方式)です。利用者にご準備いただいた3D CADデータを用い、金属粉末をレーザで焼き固め、部品等を造形します。当所の3D CADソフト「Solidworks 2022 premium」で、3D CADデータを修正していただくことも可能です。その後、必要に応じてミリング加工機やブラスト装置により切削加工や仕上げの表面加工を行い、ワイヤーカット放電加工機により造形物をベースプレートから切り離します。

PBF方式は現在主流の造形方式で、複雑形状部品や水管入り金型など、様々な形状を造形できます。

PBF方式による金属3Dプリンタの工程例